8月28日号


フランスの旅 ― Day 3 23/07/2000 (Sun) 

朝、青空市場で買い物を済ませた後、散歩を兼ねて近所に住むバベットの家を訪ねてみた。例のごとく突然の襲 撃である。 彼女はロベールの姉フランソワーズの娘、といってもその娘も結婚してもうすぐ初めての赤ちゃん が生まれるというから50歳ぐらい。 実はフランスワーズが田舎から来ていると聞いていたのだ。 門のベルを 鳴らすと中から2匹のボクサー犬が我勝ちに出てきた。続いてバベットとご主人のシューシュー(ジャン・クロ ードという立派な名前があるのに何故か皆そう呼ぶ。 顔一面の髭がキャベツみたいに見えるからかもしれな い、と勝手にそう思う。)最後にフランスワーズも出てきた。

ロベールもジェルメーヌも兄姉弟妹が多い。 20年前に来た時にロベールの田舎で彼のお母さんの80歳のお 誕生会や姪のイザベルの結婚式に連れて行ってもらい一族全員とお目通りさせてもらった。 田舎で一人暮しを していたロベールのお母さんはベビーピンクのエルメスのスカーフが良く似合う素敵なおばあちゃまだった。 イザベルの挙式の後、教会からウェディングパーティーに向かう一族の車が長い列を成してお祝いの警笛を鳴ら したり、窓から身を乗り出して手を振って走った麦畑やトウモロコシ畑のなだらかな丘陵が思い出される。 ウ ェディングパーティーは村の小さな古いお城の前にあるカフェで一晩続いた。 カフェの前の庭で全員踊った り、予定通り夜明け前に消えた新郎新婦を探しに村中を探したりと厳かな挙式の後の披露宴はこういう風に参加 者全員楽しめばいいのだと納得したものだ。

バベットの家の後ろは太陽がたっぷり入るサン・ルーム。 芝生の庭にはしゃれた緑の日よけテントが立てられ ていた。 そのテントの下のガーデンテーブルを囲んでシューシューが良く冷えた自家製の vin d'orange を振 る舞ってくれた。 白ワインにオレンジジュースを混ぜたものとかでフルーツの香りとほのかな甘みがあってな かなかよろしい。 イギリスや中国、日本ならこういう場合普通はお茶かコーヒーだが私がフランスでお邪魔し たお宅は時間帯を問わず必ずなんらかの食前酒をご馳走になった。 バベットは茶目っ気たっぷりに冗談を連発 し機関銃のようによくしゃべるから会話についていくのが大変だ。 フランスワーズは73歳になったと言って いたが品がありとてもチャーミングだ。こういう風に上手に年を重ねていきたいものだ。

今日のお料理: 良く熟して香りの高い小振りメロンの半切。 メインはEndive au jambon エンダイブを5分間 蒸してハムで巻き、その上からホワイトソース、グルイエールチーズ、レモンジュースを混ぜたものをかけオー ブンでうっすら焦げ目がつくまで焼く。エンダイブがなければリークやセロリーでもOK。ワインはもちろん冷 えた白。 最後のチーズのときには改めて赤ワイン。(毎日こういうご馳走頂いていいのかしら、という意識も 時折かすめるがせっかくの機会、しかも期限付きだから思い切り楽しませてもらおう。)

午後は次男を連れてロベールと公園のプールへ。 入り口からプールまで続く広い芝生の公園のあちこちには黒 人の家族グループがピクニックをしている。 本当は禁止されているのだそうだ。 しかし、そこはフランスのい いかげんな所、きちんと取り締まらない。4年前にも外国人移住者の制限を厳しくする動きがあったようだが以 前に比べ黒人の姿が目立つようになったような気がする。 豊かさを求めて旧植民地からやってくるアフリカや 中東の移民は教育レベルが低く貧しい人たちが多い。 まともな職業につけない、やっとありついても失業した り、それなのに子供を多く生み政府からの生活補助金で生活し、低所得者用公共住宅の賃料を滞納したり。 ロ ベールが若い頃はフランスの庶民も貧しかった。 彼も10代の半ば頃から真面目に一生懸命働き会社に一生を 捧げ郊外にささやかなアパートを買って家族を養ってきた。 フランスの税金は高い。その多くは手厚い社会保 障に当てられる。 つまり働かなくても生活には困らない。 ロベールの黒人に対する反感はこういう所から来て いるのかもしれない。 レモンドのようにきちんと教育を受け真面目に生きる人たちがマジョリティーになるの にはもう少し時間がかかりそうだ。

プールには大きな滑り台が3台。 前回来た時次男は小さかったので監視人に登らせてもらえなかったが今回念 願かなって何度も滑っては上りを繰り返す。 時々大きな波も出て楽しそう。 プールサイドの片側はパラソルが 並ぶカフェテリア。 そこで私はロベールと冷たいものを飲みながら見物。 反対側は広い芝生のスロープ。 前 回来た時トップレスの女の子達が嬉々と水遊びをしている光景に息子たちは一瞬びっくりしたもののすぐ大喜び して乗り込んで行った。 海岸ならまだしも町のプールでのこうした光景に私は少なからず驚いたものだ。 しか しどういう訳か今回は女の子皆トップありだった。

この日の夕食は9人で囲んだ。 ルドビック、レモンド、コリーヌ(ルドビックの幼友達)、ジェシカ、フラン ク(ジェシカのボーイフレンド)それにロベール、ジェルメーヌ、次男に私。

ルドビックは長身で細かったが3年前に1年ほどの地上勤務の間に太り、胴回りが多少膨らんだようだ。 彼も 40歳だから無理も無い。 4年前にあった時は前の恋人との破局でかわいそうなぐらい落ち込んでいたが、今 はレモンドと上手く行き幸せそうだ。 彼の幼なじみのコリーヌは若い頃の素晴らしいスタイルは残念ながら保 てなかったが相変わらず美人だ。 この人こそよくフランス映画に出てくるような感じだ。 ハンサムなご主人と の間に男の子が生まれたが間もなく離婚し、その後数々の恋愛を経て精神不安定に陥り、薬の副作用反作用で太 ったのだそうだ。現在は精神科医の元へ通い、その医者に新たな恋心を感じているらしい。 別居している18 歳の息子と近々バカンスに行くのだそうだ。

テレビでは連日 Tour de France を実況中継。フランスのみならず世界各国の選手が3週間フランス各地をツア ーした後、今日はパリで最終回。 バスチーユ広場、凱旋門、コンコルド広場などお馴染みのパリの街並みが映 る中、米国人ランス・アーノルドがシャンぺングラスを片手に余裕でゴールに向かう。 もうこの日時点で優勝 は確定していたのだ。 もともと最優勝候補とみなされていたがその後発覚したガンを克服、見事優勝を飾った のだ。 本来なら自国の選手に優勝させたかっただろうが、どのフランス人も文句無しにランスの勝利を祝福し ているようだ。

「なんのガンなの?」と次男が質問。 誰かが答える。 「testicule?!」と目を輝かせて確かめる次男。 英語 とほぼ同じなので即理解したようだ。 年頃のせいかこういう方面の言葉にはめっぽう反応が速い。






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