2002年11月4日号


台北の旅ー故宮博物館

北京の故宮は少し前まで歴代王朝の皇帝が住んでいた紫禁城という歴史的な重み、広大な敷地、壮大な建物、そして置いてあるものも大掛かりな物が多く圧倒され、一日歩くと足がばんばん。 でも本当に値打ちのあるものは台北に運ばれているという人もいるし台北の故宮見物は念願だった。ルーブル、大英博物館、メトロポリタン美術館に並ぶ世界四大博物館の一つとされるが見た感じそこまでは、と言う感じがしないでもない。それでも一階から三階までの展示物の量と質はさすがで、ゆっくり見ていると一日たっぷりかかる。北京の故宮と違うのは、故宮から持ち出した収蔵物を保管するために1965年に建てられた「博物館」であって歴史的な建造物ではないこと。しかし緑豊かな山あいの宮殿作りの建物は翡翠色と瑠璃色の瓦が鮮やかで威風堂々。 訪れた日は日曜だったので混雑するかと思ったが、思ったほどの人出でもなく、内部はやわらかい照明、落ち着いた木の床で一日ゆったり快適な見物だった。

一階は実在していた事が証明されている最古の王朝、殷(中国では「商」と呼ばれる)の時代から西周、春秋時代の遺跡の模型や青銅器が主。青銅器はいかついものからユーモラスなデザインまで多種多様。中国文化と世界文化との関わりを年代順に説明しているコーナーもあって今更ながら納得。

二階は新石器時代から清の時代までの陶磁器、絵画、書を一同に。 墓の副葬品として作られた鮮やかな唐三彩や漢の陶俑などには当時の華やかな王朝の暮らしがうかがえる。 宋の時代に入ると白磁や青磁が主で色彩もデザインもずっとシンプルで洗練されたものになる。元ぐらいからまたデザインに多様性が出てきて明、清の時代で頂点に達し、繊細で色鮮やかそして豪華。こうした素晴らしい「チャイナ」を求めてヨーロッパの国々が中国に押し寄せてきたのも無理からぬこと。このフロアには邸宅の居室や書斎などを復元した部屋も二つあり古い家具や調度品を展示していた。

三階は翡翠や象牙、犀の牙、木など彫り物が主。一つ一つは小さいものの、価値的にはぐっと高そう。小さいものでは翡翠の白と緑の色、質の変化を巧みに利用して彫られた「翠玉白菜」、大きいものでは象牙で作った気の遠くなるような彫刻を施した九重の塔が目立った。びっくりしたのが人骨で創ったチベット仏教の楽器。鳥葬した後残った高僧の大たい骨の端に装飾的な金属を嵌め、中をくり抜いて笛にしたものだ。また頭蓋骨の内側に細密な絵を施し金で縁取りしたものは僧侶が瞑想する時に使ったそうだ。

入場券を持っていれば何度も入り直せるので一旦博物館を出て昼食をとりに隣接のレストランへ。家庭的な中華料理で、私たちがゆっくり食事している間に単身赴任風の白人の男性が数人別々に食事をしていった。一人きりの休日を過ごすには格好の場所かもしれない。博物館は定期的に展示品を入れ替えているし、周りの環境もいいし。レストランの前に小さな中国庭園があり、緑豊かな丘をながめながら食後をここでしばし過ごした後、頼みの夫は空港に向かい東京に出張に行ってしまった。

一緒にいた次男は最初から故宮博物館にまったく興味を示さず、たまたま持っていた本に熱中していたので今度は博物館の最上階にある中国の古典的茶室に放り込み、私は博物館見物を続行。この茶室では本格的な中国茶を飲ませている。さらに残った時間で大きい方の中国庭園「至善園」を散歩。 宋、明時代のものを模した古式庭園で、色調をおさえた木造建築や池の中に浮かぶ岩など、周りの山の緑に包まれてちょっとした山水画の世界。博物館で膨大な量の財宝を見物するのは結構疲れるものだが、美味しいお食事とお茶をゆっくりいただき、最後の仕上げに庭園散歩と満足のフルコース。

一日ずっと待っていてくれた次男に約束のご褒美は台湾マッサージ。子供のくせにタイで味を占めて以来マッサージ大好きヘンな少年。 ホテルに戻り、コンシエルジュでマッサージ屋さんを探してもらう。台北の街を歩いていると散髪屋でマッサージしているところが多いみたいだが様子がわからないのでここはホテルご推薦の店を頼む。すぐに車で迎えに来てくれて連れて行かれた店はかなり大きい。入り口で待ち構えていた黒スーツのフロア・マネージャーに案内されたロビーはなんだかキャバレーみたい。そこでマッサージ嬢に引き渡され、やけに広くてなんだか怪しげな薄暗さの二人部屋に。 ん? 甚平みたいな服に着替えさせられて、マッサージ台に乗ると、「耳掃除どう?」「マニキュアどう?」「フェイシャルどう?」と次々に営業に来る。が、みんなお引取り願ってやっとマッサージ開始。洗面器にうずたかく積み上げられた蒸しタオルを次々に肩と首筋に当て揉みほぐしくれるのだがすごくうまい。そうか、薄暗い照明は仰向けになった場合まぶしくなくてちょうどいい具合なのだ。香港だとベッドの穴の空いたところに顔を突っ込んでうつぶせになった状態でしてもらう時間が長いからそのうちオデコが疲れてくるけど、その点、台北の方が上を行っているかな。

故宮入り口
故宮至善園 台北のこの辺は緑が豊か
故宮至善園
故宮至善園 左後方は故宮博物館
故宮至善園


台北の旅ー市内散歩へ(2002/11/01)

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