フランス・イタリアの旅　1

異常熱波

２年ぶりに訪れた８月末のパリは連日４０℃を上回る異常な熱波がようやく収まったところだった。熱波の影響で死亡した人の数は高齢者や病気で体力のない人たちを主に１万２千人以上という。テレビでは病院に担ぎ込まれる高齢者、亡くなった人たちを収容する施設が間に合わないためビニールのテントに冷風を送り込んだ仮設霊安室などが映し出されていた。　私たちがパリに到着した日に散歩に連れて行ってもらった林には緑が戻っていたが早すぎる落ち葉が目立った。ずっと雨が降らなかったので広葉樹の葉が枯れて落葉し、芝生は焼けて茶色にかわっていたそうだ。フランスの普通の家には冷房など当然ないので風もなく誰も経験したことのない異常な暑さに扇風機があっという間に売り切れになり、日中外を歩く人の姿は消えていたそうだ。

私たちがフランスに行くと必ずお世話になるロベールとジェルメーヌの家族は全員元気で安心したが、ご近所のコンブさんが亡くなり到着した日に葬儀があった。８０才を超えてこの２年ほどはすっかり弱っていたそうだが、今回の異常熱波には耐えられなかったようだ。お酒が大好きでよくアぺリティフにお邪魔させてもらった。　彼がどこからか運んできて庭に飾ってあったご自慢の大きな岩を何年か前.、我が家のやんちゃ坊主の次男がふざけていて倒したことがあった。　怒られると思ったが逆に「カミカーズ！」（神風をフランス語で言うとこうなるらしい）と可愛がってくれたのだ。　私たちの到着二日目に開かれたバーベキュー・パーティーでは懐かしい顔ぶれの中に傷心のコンブ夫人の姿があった。皆に元気付けられるたびに涙ぐんでいたが、最期まで愛する夫人に尽くされて幸せな人生を全うしたコンブ氏へのオマージュに、そして夫人の献身にシャンペンで乾杯。しみじみと故人をしのび、支えあう友情を感じさせるいいシャンペンだった。

バーベーキュー・パーティー



コンブさんの人生に乾杯