ガリ版日記の“ヨーロッパ珍道中シリーズ”を始めて、
ニューヨークに住む景子さんから度々メールをいただくようになりました。
彼女はニューヨーク郊外に住む一児の母。毎日の生活をつづったメールは、
なにわのおばちゃんだけが見ているのはもったいないぐらい興味深いお話ばかり、
そこで無理をお願いしてこのコーナーを作らせていただきました。

そして、1999年3月、4年半にわたるNY勤務を終えられ、日本に帰国されましたが、
このコーナは続けていただけるそうで喜んでいます。
<邦子>

景子さんの日本でのホームページが開設されました。

K's Attic(現在休止中 2000年秋頃再開予定)

目  次
【8月17日号】【7月22日号】

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8月17日


「お引越し 2」

NYにあと3ヶ月という期限を切られてしまうと、たいていの駐在員家族は買い物モー ドに突入する。
日本は物価が高いというイメージが頭の中に刻み込まれているため、引越しの準備で 忙しいといいながら「帰国するんだけど何を買ったらいいの?」という会話になるの である。
まず、けっこう頭を悩ませるのが親戚や友人のためのおみやげで、餞別をもらってい るからとか、会社の上司だとか仲人だとか、義理を果たさなければいけない人は大勢 いるのである。
要領のいい人は、年に何度かのバーゲンシーズンにお土産用の品物をまとめて買って おくらしいが、無難なところで、ブランド物のタオル、靴下など、最近はワインブー ムという事で、カリフォルニアワインを数十本単位で持って帰る人も多いらしい。
うちは、親戚とかにはそれほどおみやげを用意しなかったが、友人関係や、会社の同 僚などにこまごまとしたおみやげを何種類かを用意した。 それでもけっこうな額にはなった。
洋服や靴、日曜雑貨なども「日本は高い 日本では買えない」 と呪文のように唱えながらついつい買ってしまうのだが、日本に帰って数カ月たって 落着いてくると、海外生活で染み付いたセンスや感覚が「あれ?これってちょっとち がうかも?」と感じられるようになる。
そのうえ、日曜雑貨や食料品や、NYでは必需品でこれがなくちゃ生きて行けないと思 って買込んだ物たちが日本に帰ったとたんにどうでも良くなってしまう。
そんなもの食べなくても生きていけるし、使わなくてもぜんぜん不自由じゃなくなる のだ。
そうして、買込んだ洋服や靴や雑貨や食料品は押し入れや収納庫でいたずらにスペー スだけを消費するものにと変化してしまう。
日本で一番高いのはスペース代(土地の価格)であって、いくらNYで安く買えるから とはいえ収納する事でスペースを必要とするのなら、少々高くともほんとうに必要な 物を日本で高く買ったほうがよっぱど無駄がないのである。
アメリカで売っていて、日本で手に入らないものは、まずと言っていいくらい無い。 何に関しても、5年前の渡米した頃に比べると価格はたしかに安くなっているのだ。
もし、帰国を目の前にしている方がいたら、 「何も買わないでいいから、わたしたちの二の舞いは踏まないように」と忠告してあ げたい。




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7月22日


「お引越し1」

フロリダでの休暇明けを待っていたかのように、日本への本帰国の内示が出てしまっ た。
去年の夏一時帰国したときに「来年には帰ってもらうからね」と上司から言われてい たので、そろそろかなぁと心の準備はできていたが、3月末という具体的な日時を目 の前に出されると「ついに、この時がやって来たのか」という複雑な気持になってし まう。
今度の勤務地は『東京』。関西で生まれ育った私にとっては未知の都会である。 せめて、娘の4年生の学年が終る6月末までなんとかいられないものかと交渉をする ように夫に頼むも「サラリーマンだから会社が決めた事には逆らえないよ」というつ れない返事。
なんだかなぁと思いながらも確実に帰国は近付いてくるわけで、やらなければいけな い事は山のように出てくる。
まずは、引越し会社との交渉だが、◯通、◯ート、◯ロネコ、◯AL、などと、日系の 引越し業者はたくさんあって このところの日本の不況で駐在員の数がどんどん少な くなっている最近は、どの業者も客の取り合いなのである。
電話をすれば、セールス担当がすぐにやって来て、見積もりを出してくれる。 うちの会社は、駐在員が少ないせいか 引越しの際運べる荷物の量に制限はないが、 普通は行きがどれだけで帰りがどれだけと容積に制限があって、超過すると自己負担 になったりするらしい。
日本の狭い社宅から引っ越してきて、郊外の一戸建てに数年住むと知らず知らずのう ちに荷物が増える。
帰るときは来た時の二倍近い容積になっていたという話はよくあるのが、我が家も例 にもれず、クラシックのCDや中古レコードを集めるのが趣味の夫と、アンティークが 大好きな私とで買い集めた荷物がかなりの量に膨れあがっている。
海外の引越しは、発送の日をずらして船便を2回、身の回りの物の航空便を最後に1 回というふうに分けて荷物を発送するのが基本型なのだが、某航空会社の子会社は航 空便で全部を1回で運んでしまうというサービスを行っている。
どちらにするか、相見積もりを取ってから決めようと2社のセールスマンに来てもら ったのだが、お互いに激しいライバル意識をもっている相手同士らしく、正直に競合 の相手の会社名を言うと、相手の料金をけん制しながらどんどん見積もり料金が下が ってくる、どういうシステムになっているかわからないが、なんだかねぎらなきゃ損 という気がしてくる。
こうして、引越し業者から何度もかかってくる電話への応答と、会社の人事とのやり とりで 業者を決定するまでかなりのエネルギーを使った私は、これから3ヶ月のば たばたのいやな予感のようなものを感じるのであった。




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