憲治さんは、なにわのおねぃの学生時代、同じゼミで過ごした仲間です。
学生時代はグリークラブに所属していて、テナーの美声の持ち主です。
2003年に上海に赴任したとの連絡を受けたのですが、
単身(奥様は亡くなられています)と思いきや、
上海美人と再婚されての文字通りの第二の人生を始められています。
ひと味もふた味も違った、深くて広い「上海便り」になることでしょう!
<なにわのおねぃ>

2005年5月29日号

上海便り16号

 今回は、中国の暗部の話です。人間不信に陥る話です。全て私が経験したことです。中国では、このような怖い話にチョイチョイぶつかります。

幽霊依頼

日本でも「振り込め詐欺」という怪しげなものがはやっていると聞いていますが、それと同じようなものが中国にありました。12月のある日、大連の会社から突然の研修依頼が舞い込みました。予算が余っているから5日間の研修をしたいというものです。費用は10万元。交通費、宿泊費は別という話ですからいい話です。会社は大連の大手インフラ会社の関連会社ということ。ただ、変な要望がついていました。費用10万元に5万元をプラスした15万円を支払うから、5万元をキックバックして欲しい、というものです。
 日本なら、ここで受け入れられないとして拒否でしょう。しかし、この中国ではこの手のことはしばしばあること。この時点では、美味しい話かどうかは確定できません。そこで、話を聞いた中国人スタッフに確認してみると、次のようなことが明確になってきました。
 ・連絡の電話番号は個人の携帯番号、メールアドレスも会社のものではない
 ・会社のホームページを探したが、見つからない
 ・研修の中身に関しては一切話がないこと
 これだけのことで、もう怪しい話ということは90%確定です。最後は、数日後に、明日5万元を現金で大連まで持ってきて欲しい、そしたらその場で15万元を振り込むという話です。ここまで来れば100%怪しい話であることは確定。例えば、振込みの明細を提示されて5万元を渡したとした場合、いつまで経っても振り込まれない、確認すると振込みを直後に取消されていた、といったことになるでしょう。中国では、銀行のオンラインシステムが整備されておらず、銀行の都合もあり、入金したら受け取り側の通帳に即入金額が記入されるとは限りません。そこにタイムラグが生じる可能性があります。そこをうまく付かれるわけです。銀行も振込み受付けたものを後から取り消すといったことをやるわけです。また、現金を持ち、どこかの事務所などで会ったとしたら無理やり強奪されるかもしれないのです。
この時は、大連まで行けないと告げた途端、連絡が一切なくなりました。中国には日本のビジネスマンが沢山活躍しています。その多くの人が、こんな話で振り回されているのではないでしょうか。

善意もチョッと間違えば

次は、善意の行動が後から家内に叱られた話です。ある日、家族で匯海西路を歩いていたときです。前から妙齢の女性が歩いてきました。ハンドバックを下の方に下げていました。私たちの目の前を通り過ぎたとき、100元札が一枚、そのバッグから舞い落ちたのです。私は日本人。当然、拾い上げ、声を掛けようとしました。残念ながら「落としましたよ!」の言葉が出ません。その間に、その女性はサッサと歩いていきます。仕方なく走って追いかけ、声を掛けたのです。女性はきょとんとしています。そのうち、家内が追いつき、事情を説明しました。女性は「ありがとう」といい、受け取りました。
たったこれだけの話ですが、私は後から家内から、「二度とこんなことをしたら駄目だ」と叱られたのです。傍らで、家内の母親も非難がましい目で睨んでいます。当然、私は「どうして?」と聞きます。家内いわく、「もしそれが偽札だったらどうするのよ。もっていく、その時、偽札にすりかわっていると相手が言えばどうするのよ」。私はそんなわけ無いだろうというと、家内は続けて「仲間が出てきて、あなたが摩り替えたのを見たといえば、どうするのよ。あなたが言うことなんか誰も聞かないで変なことをされるんだから」と言う。何か納得できない。それでいろいろ聞いていると、最後は「ただ、あなたは相手が何か言っても言葉が分からないから、相手も拍子抜けになるかもね」との言葉で終わった次第です。
ともかく、100元札を拾って届けただけで、説教。今でもよく判らない。でも、後日、会社の中国人に聞くと、「奥様の心配はよく判る」とのこと。結局、判らないのは私だけか。

誰もが見てみぬ振り

  ある時、見た感じ、若い女性が道端にうずくまっていました。私は気になり、近づこうとすると、家内がやめろといいます。家内の形相が怖いのと、女性の身なりがあまり良くないので、人通りも多く、他の人が何とかするだろうとその場を去りました。
  当然、私はなぜ駄目なのか聞きます。家内いわく「身体に触れたということで、後から訴えられた人もいる。親切心で、部屋で休ませたら、お金を取られた人もある。強姦されたと訴えられた人もある」ということ。
 この時は私も納得。ただ、親切心がアダになる社会中国。油断も隙も無いということでしょうか。これからも思いがけないことにぶつかりそうです。











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