2004年3月23日号

上海便り 2

宿題で毎日、9時、10時

 我家の小学4年生の子供は、毎日、夜9時か10時頃まで宿題をしている。遅い時は11時にもなる。土曜、日曜の休日も同様の状況。外で仲間と走り回ったり、スポーツをしているのは見たことがない。息抜きは、親の買い物に付きあう時や外での食事の時くらい。そんなことで、周りを見てみると、この上海では、子供の遊ぶ声が聞こえることは少ない。
 また、中国では、小学生のときから、テストによる順位は、はっきり出てくる。どこかの国とは大違いだ。テストの結果では、わが子は、これでもクラスでは常時、1、2番なのだから、頭は悪い方ではないと思う。その子が毎日、10時頃まで宿題をやっているのだから、日本の“ゆとり教育”を見てきたものとして、唖然とする。3年生だった去年は、それでも8時頃には終わっていたように記憶しているから、4年生になって、急に宿題の量が多くなったようだ。このような状況を見ると、時代が違うが、小学生のとき、勉強した記憶が一辺もなく、田舎の山や海で遊びまくっていた私にとっては、寒気がする。
会社の中国人に聞くと、学校の先生が自分は頑張って働いていることを見せ付けるために、宿題を沢山出しているのだ、と揶揄して言う者もいるが、本当のところは分からない。

 ともかく、私は、息子が“もやしっ子”になるのが怖い。でも一方で、小さい、頭の柔らかいときに、詰め込むことの効果はどうだろうか。中国では、小学1年生から英語も授業に入っている。作文の宿題も多い。とことん、基礎的な学習をさせる。
 翻って、日本を考えると、創造力の名の下、詰め込む教育は少なくなっている。結果として、基礎を知らない人間が多くなっているのも事実だと思う。10年後、20年後、果たして、個々の国民の力は、日本と中国、どちらが勝っているだろうか。考えさせられるところだ。

能力の様相

 もう一つ、中国の教育の特色を言うと、記憶させることが中心だということ。会社の新卒者に確認したが、大学の教育さえ、記憶させることに重きを置いているとのこと。そこに日中の教育の違いを感じるし、中国の教育の強みと弱みがあるように思える。
話は飛ぶが、中国の本を見ると、ほとんど字が並んでいるだけで、概念図などの絵が入っていない。ビジネス書にしてからそうだ。概念図の効用は、読む人が見ただけで全体の構造が判る、因果関係や時間の関係、それに重点が判る、といったことにあり、読む人に自分の言いたいことを理解してもらうための重要なものだけど、それがないということはどういうことだろうか。日本の会社では、パワーポイントで概念図を作るのは当たり前。会議の資料は一枚でという企業も少なくない。ちなみに、会社の若い連中に概念図を書かせたことがある。結果は、うまく書けない。本に概念図がないということは、読者に判ってもらおうとする意識が低いことによると思うが、行(ぎょう)だけの世界で、記憶だけに頼っている世界に住んでおり、構造的な世界に住んでいないことによることも影響していると思う。
 ただ、私は、中国語ができないので、通訳をお願いするのが通常だが、その時の彼らの記憶力は素晴らしい。私のような熟年は重要なことだけは僅かだが記憶できるが、その他は瞬時に忘れてしまう。その時、彼らが頼りになること、神様のようだ。

送り迎え

 上海では、小学生の学校への送り迎えは親の大事な仕事になっている。どの家も間違いなく、送り迎えを行っている。我家でも、その仕事は、家内の母親の役割になっている。送り迎えの理由は、一人っ子政策で、甘やかしているからと考えられるかも知れないが、子供を交通事故から守るため、また、子供が変な人に拉致されないためでもあるようだ。
 拉致なんて言葉を出すと、北朝鮮だけのことと思われるようだが、中国ではままあることだと家内は言う。事実、暖かくなると、上半身裸の、足がいびつに折れ曲がった子供が物乞いをしているのを見かける。この子達は、どこかからさらわれ、無理やり、手足をいびつにさせられ、物乞いをさせられているとも聞く。本当かどうか定かではないが、このような意識があるため、送り迎えを確実に行っているようだ。



上海便り 3

車の運転マナー


 上海は今、世界の注目が集まる場所なので、友人たちがよく来てくれる。
浦東国際空港に到着したら、最初の中国の現実との出会いは、市内に向かうタクシーだ。約1時間、料金100元(約1,400円)の距離。その時、中国が初めての友人は、「怖え〜。何だよ、この運転!」と恐怖の声を上げる。車は、少しでも先に行こうとして、右へ左へと、ジクザク運転を繰り返している。上海名物、“上海ラリー”との出会いだ。それに、片道4斜線の道路に時折、人が渡っているのにも出会う。赤信号でも、人や自転車が渡っている。市内中心地に近づくと、信号を無視して横断する人は頻繁に目に付く。車は、信号が赤でも右折する。人が青信号で渡っていても、クラクションを鳴らしながら、お構い無しに走っていく。(注;中国は、右側通行。車は左ハンドル。赤信号でも右折するとは、日本で言えば、赤信号でも、車は、常時、左折できるということ)。
 これが、上海の交通(道徳)事情である。
 私は毎日、通勤にタクシーを使っているので、もう慣れっこになっているが、運転の荒っぽさは、世界に冠たるものだろう。タクシーだけではなく、バスにしても自家用車にしてもその荒っぽさは凄まじい。ただ、私は、ドキッとしたことや事故を見たことは何回もあるが、幸いにも、事故に出会ったことは無い。運転手の技術が優れているのだろう。上海市のデータによると、2004年1月の交通事故件数は5,438件、死者149人、負傷者962人ということだけど、これは果たして多いのか、少ないのか、今の私にはよく判らない。
中国に来られた際は、交通事故に気をつけていただきたい。私は、中国が初めての友人には、会った最初に、「横断歩道を渡るときは、右からも左からも車が来るし、車優先だから止まってくれない。日本と同じように、ノンビリ歩かないで、車の流れに気をつけて欲しい」と言うことにしている。

上海の交通事情

 上海の交通は、近年、整備されてきている地下鉄、庶民の足のバス、それにタクシー、それからオートバイ、上海名物の自転車がある。最近、目に付くのは、20Km以下に制限されている原動機付き自転車である。なお、中国の大きい道路は、大体、自動車用の片側2ないし3車線にオートバイ・自転車用の1車線があり、計3、4車線となっている。
 地下鉄は、現在3路線だが、2010年の上海万博までに7路線になることになっている。バスは、冷房・暖房のない車両と冷房・暖房の入った綺麗な車両の2つがあるが、前者の料金は1.5元、後者は2元で、車掌がいる。タクシーは基本料金10元(約140円)で、気軽な交通手段となっている。

 上海はどの国にも増して、交通事情が悪化しているというのが実感だ。中国での車の値段は高い。10万元〜15万元という安い車も近年、出始めたが、少しいい車は25万元、30万元する。日本円で、400万円以上といったところ。相当の出費だ。それでも売れる。上海市は、交通混雑防止対策として、新車を月6,000台に絞っている。そのために、ナンバープレートを有料で購入しなければならないシステムだが、それに4万元(約55万円)程度払わなくてはならない。車一台を買うのは、一般の庶民には簡単に買えないはずだし、ナンバープレート購入費も徐々に上がっているのに、着実に6,000台増えていると聞く。
 上海市は、このような対策で、車の急激な増加を抑制しようと努力しているが、効果は少ない。なお、上海では、買い替えのための中古車市場は本格的に機能していないし、また、国民性からして、日本のように、昼間は車庫に眠っているという車も少なく、使わないときには、他人に貸すというお国柄だけに、新車増イコール走行車両増となる場合が多い。毎月、6,000台の車が増えることは、1台の道路占有面積は4mとすると、毎月24Km分が増えることになる。それだけの道路が増えているかというと、そんなことはない。結局、交通混雑になる。
 そんなことで、中国に来た1年前と比べ、私の通勤は、値段も時間も掛かるようになった。頭が痛い。



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