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8月20日号



「蝶」と「蛾」

 お盆の迎え火や送り火の揺らぐ炎を見ていると、何だか魂が心細げに燃えているような気がします。
 今年も「四天王寺さん」の万灯篭に出掛けてきました。初めてダンナのお母さんに連れられてからこっち、毎年お盆の行事として出掛けてたのですが、母は調子が悪いというので、今年まだ浴衣を着ていない娘に、「浴衣を着て四天王寺さんへ行こう!」と誘いをかけてのことです。

 予備校帰りのGパン娘と事務所で落ち合って着替えるため、「おっかあ」の私は下駄から手提げきんちゃくに至るまでの浴衣フアッション一式を風呂敷に包んで背中にせたろうて、「はいはい、お嬢様、お召し替えでございます。」といった態。
 
 それというのも、娘は母親にとって、着せ替え人形のバービーちゃんだからなのだ!
娘が赤ちゃんの時は、レースの帽子にレースのドレスと、まるでミルクのみ人形だったし、1つぐらいになると、ハンカチ1枚で出来てしまいそうなギンガムチェックのちっちゃなビキニを着せて、水浴びさせて喜んでいたものでした。
 数えの3才の七・五・三には、歩くとすぐに脱げてしまう「コッポリ」を汗だくではかせ、まだうすい髪にかんざしやおまんを満艦飾に飾りたて、歩く市松人形に仕立てるや、じいちゃん、ばあちゃんを含む一家総出の愛玩具となって、幸せを感じ合ったりしたのでした。
 そして五才頃になると、極めつけのバレエ人形!
ドーラン塗って、鼻筋立てて、青いシャドウと紅をつけ、まだ腰のない細い長い髪をシニヨンにすると、ぞっとするくらい色気のある西洋人形が出来上がる・・・。か細い足にトウシューズをはいて、ピンクのチュチュを着てくるくる回り出すと、もう夢のような世界が広がるのです!

 ところが、女の子は中学生ぐらいから、お人形でなくなる・・・。
少女から女に移ろう時期は、蝶の幼虫がさなぎになる時と同じように、形が定まらない、訳の分からない不思議なときのようです。

 子供服は似合わない・・・。女らしい服は、こまっしゃくれていやらしい・・・。
TシャツとGパンが一番似合う、「さわやかさ」だけが取り柄の時代かな?
だからこの時期、母親は着せ替え人形としての娘には、あまり興味を感じなくなるみたい。娘達もクラブ活動だの何だのと、真っ黒けになって、男だか女だかわからない!

 そして17才ぐらいから、ボツボツさなぎが脱皮してきたかな?というような感じになってくる。
黒く日焼けした顔に、藍の浴衣なんてちっとも似合わなかったのに、今年は何だかちがうみたいだぞ?
黄色い帯を、背中でキュッと蝶に結び終わって、肩越しにながめると「しっくり」きている・・・。「あれ?」
一瞬、不覚にも私は自分が急に「バアサン」になったような気がしたのです。妙な気がしましたねえ・・・。

 まだまだ素顔が一番似合う、「ガキンチョ」だと思っていたのに、浴衣がこんなに似合ってきている・・・。
もう、いつでも飛び立てる蝶になっていたのか・・・。11月末には、「むすめ18、番茶も出花〜」なのだから、そら当然なのでありましょうかねえ。
 そんな娘を連れて、「四天王寺さん」の万灯篭へでかけました。1年ぶりの浴衣に下駄履きで、100メートルも歩かないうちに娘は足にマメを作りながら・・・。

 夜空には十三夜の月が五重塔の上に輝き、境内には、何千というろうそくの灯が揺らいでいる様は、もの悲しく幻想的であの世を垣間見たような景色です。

 お詣りした後は、境内にたくさん出ている夜店の冷やかしです! 瀬戸物等も、重いのによく買って帰ったものです。今年は竹、草、木等で出来た、素朴な玩具が沢山でていました。竹を輪切りにして、布をくるんだ棒を差し入れているだけの、「元祖」水でっぽうや、竹と千代紙の風車、竹笛など、今でもこんなおもちゃをせっせと作ってくれる人がいるのですね。
娘は、藍染に刺し子の刺繍のある手提げカバンが「かわいい」といって買いました。

 楽しかったのが下駄屋さん。
パリフアッションの目玉に下駄が取り上げられたせいか、今年の若い子のスタイルに洋装に下駄ばきというのが流行っています。ここでもおもしろい新作物が眼をひきました。
かかとがヒールの曲線を型どったような下駄や、健康サンダルのように、土踏まずのところが盛り上がってカットされた物など、ゲタかサンダルかわからないようなデザインです!
雨用の、つま先カバー(なんというのか知らない)もあって、昔母が使っていたのを思い出し、しばしなつかしい思いにとらわれました。

 ばしょう煎餅を売っているおっちゃんは、あびこ観音の節分でもいつも店を出していて、相変わらず、くりっとしたキュートな目つきで、腰を振り振りせんべいをのばしていました。浴衣を着た娘を目ざとく見つけ、「きれいなおねえちゃん、さあおせんべいあげよ!」とちぎってくれました。そして、ついでに「もと、むすめさん、あんたにもあげる!」と私にもちぎってくれたのですが、私は、「もと、むすめさん」に口元がひきつりました!

この日は、娘は「蝶」になり、私は「蛾」となった記念すべき、万灯篭の夜でした!

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8月7日号



10代の父親と母親

 娘の友達が、10代で「できちゃった結婚」をして、7月に赤ちゃんを生んだというので、娘にくっついて赤ちゃんを見せてもらいに出かけました。
 まだ1カ月と少しの、ちっちゃなちっちゃな赤ん坊がちょこんと寝ていました!
18年ぶりに、出来立ての赤ちゃんを抱かせて貰って、もうほんと、感激でした。
こわれそうで、落としそうで、ガチガチに緊張して、「抱っこ」したのですが、赤ちゃんの力の固まりのような動きを腕に感じて、そのすごいエネルギーに改めて感動・・・。
丁度、魚を釣り上げた時に、魚が手の中ではね廻る、あんな力強さで小さな足で蹴飛ばしてくるのです。  唇の先に、オッパイの吸いダコができていたり、広い大きなおでことうすい髪、小さなえんどう豆が並んでいるような足の裏の指・・・。 そうそう私の赤ちゃんもこんなんだった・・・。過ぎ去ったなつかしい想いがこみ上げてきました。

 真っ赤な顔をして、鼻をフガフガいわせて泣き出すと、「あ〜あ、これだ、これだ!」
真夜中にこの声を聞くと、どれだけ寝入っていても、はっと目が覚め、オッパイをやったり、おむつを替えたり、ねんねんよ〜となだめたり・・・・。喉元過ぎてとっくに忘れていたことが、ありありと思い出されてくるのでした。

 4年の間に3人の子の母親になった私は、7、8年の間、夜ぐっすりと眠れることのなかった日々が思い出される。 小さな命を預かった緊張感があの頃、無意識に貼り付いていたのだろう、ちょっと赤ん坊が寝返りを打ったぐらいの気配にでも眼を醒ましていた。
それがどうだろう、この頃では、泥棒が入っても分からないぐらい、いぎたなくぐっすり眠り込んでいる。もうあんな生活はできない。
今の、若いお母さんがそれをやっている。みんな順ぐり・・・。

 娘は中学時代のクラスメートがもう母親になって堂々としているのを見て、ショックを受けたり、憧れたり。おむつを替えて、赤ん坊のオチンチンを見たかったのに・・・と想いは入り乱れていた様子。

 でも、大きなお乳を張り出して、ドデーンと貫禄あったのは母親だけ。同い年の新米パパは、やっぱりまだ18才の若い男の子って感じでした。
若い奥さんと、ちっちゃな赤ん坊を抱えて、若いお父さんもこれからが大変なのだ・・。
  

「お父さん、頑張って!!」

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